森鴎外だったか夏目漱石だったか忘れたけど明治の文豪みたいな人がですね、
奥さんが亡くなって間もない頃、英国人の知人から「あれ、奥様はどうなさったのですか?」と尋ねられ、
笑みをたたえて「いや、死んでしまいまして、えへへ」みたいに言ったもんだから、尋ねた人は
「こいつは奥さんの死のショックで頭がおかしくなったのかもしれない」と思ったそうです。
これが韓国とか気性の激しい国の方だったら、即刻 burst into tears 状態でしょうねー。
悲しいこと、辛いことがあっても日本人特有のあの、ほれ、アルカイックスマイルっていうんですか、
あれでやり過ごしちゃうこと多いですよねー。
辛い体験を、まさにアルカイックスマイルで語られる方が少なからずいらっしゃいます。
死んじゃったの、てへっ♪
苛められてたの、えへっ♡
みたいな。
さあ、どうやって泣かせてくれようか、と腹の中で指をパキパキ言わせていることをお許しください。
コネクトロンにお越しいただいたお客さまで、泣きに突入された最短時間はですね、30秒です。
ええ、玄関はいってすぐにボタボタと涙を落とされたのですよ。
こういう方って、ラクチンなんですよー。
ご自身に自覚があるし、抑えようとしてないし、対処すべきポイントにすぐたどりつけます。
手強いのは「てへっ」な方です。
私はもう大丈夫、俺は克服してるぜ、もう過去は振り向かない、って一見前向きなんですよねー。
ほんと困ります、これ。
だって、残ってるんですよ。
ケリをつけられてないんですよ。
カサブタ、まだ残ってるんですよ。
その部分に触れられないように、必死で守っていらっしゃいます。
うかつに触れると激しい抵抗に会うこととなります。
まるで
何でもないように話す
まだ納めどころを
見つけられずにいる
あかりさんの心が
ぽっかり浮かんでいるのがわかった
何でもなくなったのではなく
何でもないようにしか話せないのだ
まだ
このあかりさんの様子が「てへっ」な状態ですよね。
そんな悲しいこと、どうして笑って言えるんだよっ、って突っ込みたくなりますが、
本人はまだ泣くことも出来ないでいます。
納めどころが見つけられずにいる、っていうのはうまい表現ですね。
自分の気持ちと折り合いがつけられていない。
その存在を認めた時に自分にやってくるものを受けとめる覚悟ができていない。
傷ついたがために出来てしまった心の穴ぼこ。
それを埋めるために代替行為をいろいろやってしまうのですが、
本当に欲しかったもの以外でそれを埋めることは出来ません。
望ましいのは、イメージとしては穴を埋めるというより
凹んでしまった板金を裏側から叩いて平らに戻す、って感じですかね。
本来あるべき状態に戻す。悲しいことを語るときは泣いて当たり前。
ほんとうに、ほんとうに心が癒された時は、
辛いこともあったけど、得られるものもあった、受け取ったものもあった、と
穏やかな笑顔で美しい思いでを語れることでしょう。
「てへっ」な笑顔には、寂しさがまとわりついていることがほとんどですね。