ネルソンさんとヨシヨシ

映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』

話題の映画『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』(塚本晋也監督、2026年9月11日公開)、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。私も見てきました。

塚本晋也監督というと『鉄男』の人というイメージが強いですが、そろそろそのイメージは更新したほうがよさそうですね。『地獄の黙示録』級のロケを、日本人監督がやってのけたのですから。

原作は2014年に読んでいた

実はこの作品の原作、アレン・ネルソン『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』は2014年に読了していました。読書メーターにあげた感想がこちらです。

フルメタルジャケットはリアルだったのだなあ。一番の衝撃は、南北戦争の南軍の旗に意味があった、ということ。アメリカってほんと建前と本音の国なんだな。ネルソンさんは黒人だったからこそ書けた本。白人には書けない。そして三回まわってクルクル、まさにNLPだよね。

https://bookmeter.com/reviews/41269957

そう、私が今回映画を見に行った目的のひとつは、この「3回まわってクルクル」が映像でどのように描かれているかを確かめることでした。

そもそもNLPとは

NLPとは Neuro-Linguistic Programming(神経言語プログラミング)の略で、「脳と心の取扱説明書」とも呼ばれる実践的な心理学の手法です。

1970年代、言語学のジョン・グリンダーと、当時その学生だったリチャード・バンドラーが、当時の卓越したセラピスト3人——ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ、家族療法のバージニア・サティア、催眠療法のミルトン・エリクソン——の仕事を分析(モデリング)するなかで生み出したものです。

NLPは「帰還兵のPTSDを治すために開発されたもの」ではありません。ただし、生まれた時代背景は無関係ではありません。ベトナム戦争からの帰還兵が心を病んで帰ってくる——ネルソンさんのような人が大勢いた——という現実が、1970年代のアメリカでトラウマへの関心を押し上げ、1980年にはPTSDが精神医学の診断基準(DSM-III)に初めて採用されました。NLPも、そうした「傷ついた心をどう扱うか」という同時代の要請のただ中で生まれ、受け入れられていった技法だと言えます。

劇中、「治療法が確立されていない」というセリフが何度も出てきます。戦地で未曾有の体験をして戻ってきた帰還兵たちと、それを治そうとする側の双方にとって、まさに初めての事態だったのでしょう。手探りのなかで、さまざまな手法が積み上げられていきました。NLPにも「トラウマ解消」「恐怖症の治療」と銘打ったテクニックがあります。

劇中の「3回クルクル」とNLP

映画では、ネルソンさんが何度かその場でクルクルと回る場面がありました。「3回まわってクルクル」です。

ネルソンさんは講演会で戦争体験を話すことを求められます。自身の過酷な体験を反芻することになる、たいへん辛い作業です。「うまく話せるだろうか」「こんな話をして聴衆を傷つけてしまわないだろうか」。

聴衆の前に一歩を踏み出すためのおまじないとして、この3回クルクルが置かれているように見えました。3回まわれば大丈夫、と自分で自分にインプットするわけです。あがり症の人が手のひらに「人」と書いて飲み込むのと同じ種類の、自己暗示の作法です。3回クルクルと回ったネルソンさんは、「よし!」と決意を込めて壇上へ進みます。

(ここは補足しておくと、劇中の所作をNLPの技法と見るのは私の読みです。原作や映画が「これはNLPだ」と説明しているわけではありません。1947年生まれのネルソンさんの体験と、1970年代に成立したNLPは時代として重なりますが、同一の技法として描かれていると断定はできません。)

コネクトロンで使うNLP

コネクトロンでは、皆様のお悩みへの対応の手法として、NLPをメインに用いています。NLPには、その場で変化を起こすことを目指す実践的なテクニックが数多くありますが、コネクトロンで実際に使っているのは片手に足りるくらいです。

そのひとつが「タイムラインセラピー」で、これをアレンジした「コアトランスフォーメーション」をコネクトロンでは用いています。目の前の問題は、過去の未完了の問題が再現されたものだ、という前提に立ち、過去に遡ってどんな未完了の問題があるかを探り、そこで欠けていた必要なものを補います。

「欲しかったときに、欲しかった人から、欲しかったものをもらえなかった」という欠落感。それを埋める作業を、コネクトロンでは「ヨシヨシ®︎」と称しています。

「痛かったよね」と「痛くないよ」

子どもが転んで泣いています。泣き止ませようと「痛くないよ〜」と声をかけることが多いでしょう。でも、実際は痛いのです。痛いのに「痛くないよ」と言われてしまうと、「痛いと思ってはいけないのか」という間違ったメッセージが刷り込まれかねません。

望ましいのは「痛かったよね」と気持ちを受け止めてあげることです。安心して受け止めてくれる相手がいれば、子どもは「痛かった」という気持ちを出し切れます。泣くだけ泣いて気が済めば、その体験は「完了」します。過去の未完了の問題が、現在の問題として再現されることは、もうありません。

ネルソンさんの語りもまた

ネルソンさんの戦地での過酷な体験も、それを語り部として語り出すことで、そのつど「完了」を迎えていたのではないでしょうか。話すこと、語ること自体が、ネルソンさんにとっての大きな癒しの作業だったのだと思います。

その語りに耳を傾けた人たちは、意識してそうしていたわけではないでしょうが、「辛かったよね」「苦しかったよね」と気持ちを受け止める場になっていた。結果として、ネルソンさんが気持ちを出し切るのを助けていたのではないでしょうか。

映画に登場した「3回クルクル」も、戦争が生んだ兵士の苦しみ——あってはならない苦しみ——を抱えたまま壇上に立つための、小さな工夫でした。そして、その苦しみを扱うために積み上げられてきた手法のひとつが、NLPです。

そういった手法を、皆さんの日々の生きづらさの解消にも活用させていただけたなら。その思いでネルソンさんとNLPを紹介させていただきました。

最後までお読みくださりありがとうございました✨
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